青森県に多くの外国人が訪れる理由と課題について
青森県に住んでいると、駅や観光施設で「外国人増えたな」と思う事がたびたびあります。
元々青森県には米軍基地があるので、アメリカ人は度々見かけます。
しかし近年ではアジア系の観光客を急激に見かけるようになりました。
日本政策投資銀行東北支店が実施したアジア8つの地域と欧米豪の4つの地域を対象としたアンケートで、「青森県に行ってみたい」という人の割合が東北トップになりました。
都市別認知度としては福島、仙台・松島、に続く3位だったのですが、【行ってみたい都市】という項目では全国主要54都市の中で東北1位に輝き、全国順位もアジア28位、欧米豪で8位と大健闘。

毎年青森県を訪れる外国人は増えていますが、このアンケートによってまだまだ訪れて見たいという人が多い事が分かりました。
実際に青森県はインバウンドが好調で、2017年・2018年と東北1位になっているし、全国的に見てもトップクラスの伸び率を誇っています。
なぜインバウンド人気の高い東京や大阪・京都からも遠く、日本人からすれば田舎に部類する青森県がこれほどまで外国人に人気なのか。
その理由と今後の課題について書いていきたいと思います。
なぜ青森県に多くの外国人が訪れるのか?
先ほども言いましたが青森県はインバウンド人気の高い地域から離れており、また本州の端っこなので地位的にも良いとは言えません。
そんな青森県になぜ?と思いますよね。
大きなの理由としては青森空港の国際線の増加でしょう。
青森空港の国際線就航
韓国の仁川空港、中国の天津空港への路線が就航し、2019年夏には台湾の台北と結ばれました。
この各都市には青森県が積極的にPR活動も行っており知名度も向上していて、青森ねぶた祭りや青森のリンゴなどアジアでは比較的有名になっています。
また青森港へのクルーズ船の寄港も増加しており、外国人が直接青森に行ける手段が増えているのも理由の一つです。
しかしそれだけではありません。
青森県は元々東北地方の中でも外国人観光客が少ない県でした。
それに加え東日本大震災の影響で、東北新幹線全線開業したにも関わらず日本人・外国人観光客が激減したのです。

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だけど諦めなかったのが青森県。
北海道新幹線開業をにらみ、インバウンドが好調だった北海道との連携を考えたのです。
そこで取った作戦が【立体観光】です。
立体観光
まずは立体観光とは何?ってことを説明します。
青森県にある新幹線・フェリー・空港を利用し、インバウンドが好調の北海道から観光客を引っ張ろうという作戦。
一見、意地汚いような作戦に見えますが、北海道の観光客を奪うというわけではなく、「北海道に行ったついでに青森にもおいでよ」「青森から北海道に行ってよ」という考え方です。
北海道は外国人に人気の国内有数の観光地ですが、青森県はその人気の北海道に近いという地理的メリットを最大限に生かしました。

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これによって青森と北海道が互いにウィンウィンの関係を作ることができ、青森県としても多くの外国人が訪れるきっかけを作ることに成功しました。
この【国際線・クルーズ船の増加】と【立体観光】こそが、インバウンド好調の理由と言えるでしょう。
現在では東北トップクラスの人気を誇る観光県となり、2017年の外国人宿泊客数は宮城を抜いて東北1位になっている他、訪日外国人(インバウンド)の伸び率は全国1位に輝いています。
しかしこの東北ナンバーワンに輝いて喜んでばかりはいられず、多くの課題もあります。
青森県が抱える課題
宿泊施設不足

どんなに知名度・人気を誇ったとしても宿泊施設が足りなければ滞在時間は少なくなり、お金を使ってはくれません。
2017年に東北で一番外国人宿泊客数が多くなりましたが、実はもっと受け入れることができたはずなのです。
しかしツアー客を取り込める宿泊施設不足が原因で、日本人・外国人共に宿泊客は秋田県や岩手県に流れているのが実情です。
実際、岩手県の宿泊施設数は青森県よりも多く、青森県のホテル不足が深刻な祭り期間は岩手県に観光客が流れています。
そのため、ねぶた祭りを例に挙げると夜9時頃まで祭りは続きますが、団体客は8時に切り上げては岩手県に向かってしまい、団体席はガラガラになってしまっています。
毎年のように青森県ではホテルが建設されていますが、まだまだ足りていませんし、冬季は閑散期で日本人の宿泊客が減るので無駄には作れないという理由もあります。
しかし観光サイトにも載っていないような宿泊施設は繁忙期でも空いていたりするので、そういう所を紹介し、外国人宿泊客を流失させない対策が必要になっています。
冬季観光が弱い
青森県はご存知の通り雪が多く、冬季の観光が弱いとされています。
理由としては雪の影響もありますが、今まで多くの割合を占めていた日本人観光客が冬季は減るため、施設の営業時間を短くしたり休業したりする施設が多いためです。
開けていてもお客さんが入らなければ閉める、これは当たり前の考え方です。
ですがそのせいで、冬季に青森県を訪れても何もないというイメージが付けられてしまっています。
他にも青森県は桜まつり・夏祭り・秋の紅葉と季節観光が強すぎ、冬のイベントはあまり目立たない状態です。
冬に日本人が来ないなら、外国人客を誘客するしかありません。
冬の北海道は外国人に人気で普段降らない雪を楽しんだり、スキーやスノボーなどを楽しむアジア系観光客やオーストラリア人が多いそうです。
つまり雪にも需要があるので、「冬だからお客さんが来ない」と言い訳に出来ないのです。
海外の人々に青森県の冬をPRして外国人観光客が増えれば冬季の短縮営業・休業が改善されので賑わいが戻り、日本人観光客も増えていくかもしれません。
雪は北海道だけではないということをアピールしていく必要があります。※ただ北海道のブランド力は高い壁です
外国語に対応できない
青森県のみならず地方で深刻な問題ですが、宿泊施設及びお土産施設に外国語を話せる人が少ないという問題があります。
大都市圏は若い人も多く、外国語を話せる人材をすぐに確保できますが、地方ではなかなかそう上手くいきません。
そもそも経営者が高齢だったりもするとなおさら外国語対応できないのです。
特に小さい自治体ほどその傾向が強いです。
案内板に外国語表記を付ける施設も増えていますが、それだけでは臨機応変に対応できません。
なので翻訳機械の導入や外国語を話せる人を雇ったりするのが一番大事になってきますが、予算的にも厳しいのが実情です。
国の対立や感染症によるリスク
好調な青森へのインバウンドでしたが、徴用工を巡る日韓の対立や中国で発生したコロナウイルスが原因で一部外国人観光客の減少が見られます。

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外国人観光客を見込んで準備していた関係業界からすると大きなダメージだと思います。
インバウンドが好調だからこそ、政治的な面や感染症的な面で何か起きた時の影響は計り知れないのです。
そういったリスクというのも課題と言えるでしょう。
官民一体となり課題の解決を
青森県の名前が多くの外国人に知られていることは良いことです。
しかしこちらのアンケートをご覧ください。
実は東北地方という名前はあまり知られていません。
そして訪問意欲も低いという結果です。
「あれ?関西低いな」って思うかもしれませんが、「大阪は知っていても関西は知らない」「福岡は知っていても九州は知らない」という外国人がいるということになります。
外国人観光客は地方名は知らなくても都市名を覚えてきます。
なので知名度の低い東北地方を青森県が引っ張っていかないといけません。
インバウンド客が年々増え、数字的には順調な青森県ですが課題も多く残っています。
しかし地方の財政状況や企業の経営状況を考えると、その対策は単独では厳しいものがあります。
そこで各自治体と民間企業が協力し合うしかありません。
「誘客出来たからオッケー」ではなく、継続して訪れてくれるよう日々対策が必要なのです。
高い旅行費をかけて来てるのに満足してもらえなければ二度と来ない場合もあります。
景色が良くても店の対応が良くないと思われたらそれだけで評価が下がってしまいます。
SNSの影響力が強い海外ではすぐにその悪い評判は広まってしまいますので、自治体と民間企業がしっかりと受け入れ態勢を整えていかなければなりません。
確かに東北で1番ですが他の地域に比べてはまだまだ少ない方ですので、そこで満足せずもっと取り組みを強化して欲しいと思います。
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